18

8月

2010

社会貢献ブームの背景とは?

 今や若者の社会貢献に対する関心は、ソーシャルメディアでの盛り上がりを見ても明らかに高まっている。またコーズマーケティング/キャンペーンも着実に拡がりを見せており、米国では2010年のスポンサー支出は前年比6%アップの16億ドルと予測されており、米国内のソ-シャルメディア広告費の18億ドルと肩を並べる程の規模に成長している。

 

 では何故今「社会貢献」なのか?

 

 企業活動においては、以前からCSRの見地から社会貢献活動は数多く行われてきたが、若年層を中心とした参加意識の向上の背景には、人間が持つ「客観的価値」と「主観的価値」の関係性が働いていると思っている。

 

 人は「客観的な価値」を持つ「お金」を稼いで、それによりモノやコトを購入し、自分の「主観性」に基づいた価値の消費を行っている。つまり「客観的な価値」を手段にして、「主観的価値」を満たす消費活動を行うことによってバランスをとっている。バーチャルな関係性を構築するソーシャル・メディアが、リアルなオフ会により微妙なバランスを保ち、継続性を維持することに似ている。

 

 ではこのバランスと「社会貢献」との関係を探ってみたい。

 

 日本の60年代から始まった高度成長期には、皆競うように「客観的な価値」を増加させて、「主観的価値」を満たすことに精を出し、「一億総中流時代」を形作り、ブランドを買い漁り、土地を購入しまくるまでになった。しかし、30年後それは弾け、ITバブルやリーマンショックを経験することとなる。そしてやっと従来絶対的な「客観的価値」であったお金の存在に疑問が芽生え、さらに買い続けてきたはずの「主観的価値」が、実は全て「客観的価値」に基づいたモノであり、単なるラベルの域をでないモノであったことに日本は気付き始めた。そして本来の「バランス」を求めて、「主観的な豊かさ」を模索する動きが顕著に見え始めたのは、今から約5年位前からだと思う。ちょうどLOHASというライフスタイルが出始めた時期と重なる。

 

 LOHASというキーワードが出始めた頃言われ始めたのが、「学び」のブームだ。これは世界的な流れとなっているが、高齢者の大学入学が増加したり、資格取得やアカデミック・ツアー等も増加しており、これは全て「自分磨き」のトレンドであり、当然「主観的価値」を具現化する動きでもある。またこの頃「ストーリー・マーケティング」という言葉が拡がり始めたのだが、モノやブランドのその背景にある“意味”を想起させることで、「主観」に訴え興味を深化させる手法である。このマーケティング手法が隆盛を極めたか否かは不明だが、確実に一般人の中に「意味のある消費・生き方」を模索する動きを刺激したことは確実である。そしてここで社会貢献というキーワードが登場する。

社会貢献への意識の向上の直接的なトリガーは、「Room To Read」のジョン・ウッドの存在やソーシャルメディアの隆盛にあるのは言うまでもないが、社会的な下地は既に整っていたと思われる。

 

 モノがあふれる現代において、「主観的価値」を購入するインセンティブは低いだけに、「客観的価値」への欲望も低下していた。しかし、生きた「客観的価値」の交換市場が見つかった。これが社会貢献活動である。言葉は悪いが、新興国あるいは後進国向けであれば、僅かなお金で大きな援助が可能であり、何と言ってもリアルな社会から現実的な成果を得ることができ、「主観的価値」を充足させる。「先進国の奢り」として責められると思うが、当初の入口はその辺りにあるに違いない。そしてtwitterでの地震災害募金活動等の事例がソーシャルメディアで多数喧伝されることで、“民のパワー”に目覚め、社会起業家等の言葉が生まれるような時代に突入して行ったと解釈している。

 

 SR(Social Responsibility)のガイドラインとしてISO26000が本年発表されるが、それにより新しい“公の場”の定義が明確にされることで、社会貢献活動はさらに拡がっていくし、企業も積極的に関与することになるだろう。またさらに多くのNPO/NGOが設立され、社会起業家も増え、数十年に渡って新たな社会が構築されていくと思われる。ただ一つ懸念するところがある。それは、アイデンティティの欠如の問題である。

 

 社会貢献活動とは、問題解決のための活動である。確かに解決に結びつく活動は、精神的な「主観的価値」を満たすことだろう。但し単純にそれだけでは「自我の欲求」を満たすに過ぎない。人の欲求の最終段階は自己実現である。車で例えるならば、「精神の充足」が前輪で、それを後押しするのが「知識・経験・制度」等の後輪が揃って、自己実現に繋がる。自らのアイデンティティと社会性を確立しなければ、「主観的価値」の価値は確立しない。あのナイチンゲールの「自己犠牲のみの貢献は永続性がないため、しっかりとした経済基盤を持って活動すべき」とする発言も示唆に富んでいる。

 

 一般の人でも企業でも、歴史は持っているし、目標も持たなければならない。社会貢献活動という「何となく良いサウンド」に惹かれて取り敢えず乗っかっておこう、程度の取り組みならば、時間とお金と信用を失うだけの結果しか待ってはいない気がする。

 

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